男たちの戦い〜夏物語〜

梅雨も明け夏真っ盛り!海に祭りにBBQ!花火を見上げて肩を寄せ合う

秋の気配を背中で感じながらも気づかぬフリで最後の夏を楽しんでいる

そんな浮かれた世の中と正反対な僕の夏休みが急遽訪れた

 

大人になり、はじめての入院である

そんな大ごとではないが足をケガをしてしまい1週間ほどお世話になることに

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入院が終末ということもあり

手続きなどは救急外来で行うということで、指定された午前10時に病院へ

 

それなりに他の患者さんもいたのだが

僕の入院生活は急アルで運ばれてきた女性のまさに朝帰りを見送ることから始まり

今度は涙を浮かべエレベーターを待つ家族を目の当たりに

握った拳とその表情が全てを物語っていた

そんなドラマの1シーン

いつもなら他人事だったことが急に目の前に現れるとなんとも言えない気持ちになる

この話題はちょっとシリアスすぎるからこのあたりで<a href="〇〇.html">手続きを済ませて病室へ</a>

 

さて、手続きを済ませて病室へ

個室と迷ったがちょっとした好奇心で大部屋を選択

病室に入るとそこは男6人夏物語である

しかし7人ではないので真っ直ぐな愛が最後に報われることはないしCHA,CHA,CHAでもない

もちろん男女6人でもないので、夏の計らいで君と波のリズムの上で溶けることもない

非日常のおじさん6人衆相部屋生活のスタートである

 

程よい緊張感の中、新参者を気にしながらもお互い悟られぬよう横目でチラリ

自分のプライバシーは守りたいが人のものは覗いてみたい

トイレや診察のたびに会釈を交えて様子見のジャブを繰り出しつつカーテンを閉めては引きこもる

この己の殻は破られまいと皆が必死にガードを上げ無言の攻防を繰り広げる中

やはり居るのである

デンプシーロールさながらに急に距離をつめストレートを放つ者が

自慢のフットワークなのであろうがここは整形外科だ

決して軽快とは言えない

ダウン寸前の足取り故に決定打もない

なぜなら、そもそも歯がないのでほぼ何を言っているのかわからないのだ

しっかり耳を傾けるとどうやら蒲田に住んでいるらしい

自己紹介ありがとうそして妙に納得

そんなやりとりを終えて明日には手術なので早めに就寝

 

当日、ドクターからも再度説明があり看護師さんからも勇気づけられた

さらに、麻酔があるので寝て起きたら終わっているから大丈夫だと…

違う、そのストーリーは分かっている

僕が恐れているのはそんなことではない

そう、薄々気づいてはいたが現実になる事を恐れてずっと口にすることができなかったが

やはり避けては通れぬらしい

尿道カテーテル

 

時間になりオペ室へ

戦いの幕が切って落とされる

 

早速、麻酔が効き始めているが挿入の段階ですでに痛いし

抜くときは麻酔が切れた後だと知り震えた

男にはたとえ勝てぬと分かっていても戦わないといけない時がある

どうやら今日がその時なのであろう

 

 

 

 

 

ん?

あー、終わったのか

まだ麻酔が効いており下半身が全く動かないが

ハッキリとしない意識の中でもやはり1番気になったのがこやつの状況だ

戦況を知ること、よく理解することが勝負を大きく左右する

それが決して負け戦だとしても僕は戦わなければならない

 

もうね、驚愕したよ

コンビニのストローなんて比にならない

このサイズを使うのはバニラクリームフラペチーノなのよ

そして僕に残された穏やかな時間は麻酔が切れる数時間という事か

後戻りも時間を止めることもできない

それが人生というやつで誰の元にも必ず訪れるであろうその瞬間を

どのように迎え撃つのか

やはり最後はメンタルがモノを言うのだ

どんなに優れたアスリートも試合前は恐怖で打ちのめされる

そう、目を閉じ己を高めていく

俺はできる!お前はできる!

決して負けない!お前は勇敢だ!頭の中のセコンドもそう言い放つ

よし、やれる

 

しかし、一筋縄ではいかなかった

やはり強敵である

魔法が解けた瞬間、どっちが原因で入院しているのか分からなくなるくらいの激痛

わずかに残された痛みの少ない絶妙なポジショニングをキープしていたとしても、些細な動きを過敏に察知し保っていたバランスを容赦無く崩してくる

ミリ単位の戦いの中、高めていたはずの精神が削れていく

結局一睡もできずに翌朝9時を迎えた

 

さあ、ここが大一番

男の見せ所である

 

 

 

開始1秒、やっぱり無理

恐怖は敵を大きく見せ打ち勝つのは安易ではない

もう、リングに上がっただけでも褒めて欲しい

タオルを隠すセコンドを無視し隠し持っていたT字帯と言う名のタオルを投下した

 

負けを認めることも男には大事

そこからは張っていた虚勢も崩れ落ち

身も心も生まれたままの姿に

 

優しくして欲しいと泣きすがる私を優しく包み

ここにいる人たちは皆乗り越えた先輩だと

あなたにもできる

白衣の天使がそう諭してくれる

 

さぁ、息を大きく吐いてごらん

 

恐ろしくて目は背けたが感覚でわかる

入っている

それもかなり深く

手品でよくみる国旗のやつ

まさにあれくらい

うぅ...

 

 

終戦

終わってみると実に清々しい

ノーサイド

そしてこの男の戦いに寄り添ってくれる天使達には本当に感謝する

どこまで尊いのだ、ありがとう

 

そんなこんなであとは退院を待つばかり

相変わらず距離感バグっているおじさんすら

もう軽くいなすくらいにこちらも回復している

 

だけど気持ちはわかるよ

これも何かの縁

二度と交わることのない男たちの過酷な夏休み

皆が不安を抱えてここに集どい

同じ境遇の仲間にひとときの安らぎと安心を求める

なんなら居心地すら良くなってくる

そして天使のまつエクTバックは入院患者にはかなり罪深く

というかありがたい?から罪深いのか

魔性の時が目の前に広がっている

しかしここは安住の地ではない、ロングバケーションも終わりだ。

それぞれのいるべき世界に旅たとう

 

退院の日に 再会の約束をすることもなく皆と別れを交わす

戦い抜いて抜けた歯ならばそれも勲章か

心なしか勇しく見えたよ

我々はこの戦いを乗り越えたんだ

この先何があろうと大丈夫

武運を祈る